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自然ふれあい観察会in那珂川「五ケ山ダムビオトープ観察会」を開催しました!
活動報告
那珂川町(現・那珂川市。以下同じ。)では、五ケ山地区にアウトドアの拠点としてキャンプ場等の施設整備を進めています。都市圏から車で1時間ほどの距離で手軽に自然環境を体感できる、たいへん魅力的な地区が生まれようとしています。
筑紫・糸島地区地域環境協議会(事務局:福岡県筑紫保健福祉環境事務所)の事業として、10月に市制施行を迎える那珂川町の新しい魅力の紹介と、その1つを体験できるものとして五ケ山ダム湖内に設置されたビオトープの観察を行うイベントを開催しました。
- 開催日時:平成30年9月15日(土曜日) 9時から12時30分
- 開催場所:五ケ山地区、ダム湖内ビオトープ
- 参加者数:20名(大人18名、子ども2名)
- 講師:那珂川町地域整備部地域づくり課 三宅眞仁 氏、福岡県南畑・五ケ山ダム管理出張所 主任技師 田上浩士 氏、福岡県保健環境研究所 環境生物課 課長 須田隆一 氏
那珂川町役場に集合。前日まで雨が降り、重い雲が残る中での開催となりました。
那珂川町役場から五ケ山ダムまでは、バスで30分程度の移動となります。その間、観察会の見どころについてお話をいたしました。
【観察会の見どころ】
五ケ山ダムの建設地は那珂川の上流域にあって、川沿いを中心に水田が広がっている場所でしたが、かなりの部分が水没しました。
ダム湖内のビオトープは、ダム建設により失われた水田環境を少しでも復元することにより、この地域の自然の質が可能な限り維持されることを願って、専門家の検討を踏まえ湿地ビオトープとして設計されました。ビオトープの表土に、この地域に元々あった水田の土壌を使うことで、その土壌に埋もれていた種子が発芽して植物が茂っていきます。
「そのような機能がどれだけ果たせるようになるか、これから見守っていこう」という趣旨で、水田環境・湿地で見られる生きものを掲載した観察シートを参加者に配り、参加者自身の目で確認してもらうこととしました。
ダム横の五ケ山ダム管理所に到着後、まずは会議室で講話がありました。
【五ケ山地区施設整備の解説】
三宅講師から、那珂川町が進めている五ケ山地区施設整備のお話がありました。「五ケ山クロス」と名付けられた施設群は、展望スポット、キャンプ施設、物販・飲食施設等から成ります。
キャンプ施設にはペットフリーの区画もあり、多様な楽しみ方が期待できそうです。
今年度末までの完成に向けて、工事が進められています。
【五ケ山ダムの紹介】
田上講師から、五ケ山ダムの紹介がありました。五ケ山ダムの必要性、ダムの構造、工事の内容、環境配慮の話などがDVDでわかりやすく紹介されました。
その後、会議室を出て、ダム堰堤の上を歩きながら、ダムの機能等について説明を聞きました。相変わらず重い雲が広がっていましたが、雨が降ることもなく、広大なダム湖面や反対側の福岡都市圏の風景を楽しむことができました。
晴れた日には、福岡空港付近まで見渡せるそうです。
バスに乗って、いよいよビオトープの観察へ出発です。
途中、ダム紹介DVDの中で説明のあった「小川内の杉」に立ち寄りました。
【小川内の杉】
ダム工事における環境配慮の一環として、水没地域から移植された小川内の杉(佐賀県天然記念物)です。
散水装置で水を与えたり、消毒を行う等により、杉の生育は今のところ順調とのことです。
【倉谷ビオトープの観察】
五ケ山ダムには2つのビオトープがあります。完成して数年が経ち、生きものが定着してきた大野ビオトープと、昨年春に工事が完成し、ようやく植物が茂り始めた倉谷ビオトープです。
今回は倉谷ビオトープの観察を行いました。
参加者は自由にビオトープ内を観察し、水田環境・湿地の生きものを確認していきます。
観察シートを挟んでいる探検ボードは、子どもエコクラブから提供を受けた品物で、今回の観察会で初めて活用しました。
須田講師が水辺で一際目立つ植物を指差しました。「これはカンガレイ。茎の断面が三角形なのが特徴です。触ってみてください。」
参加者が須田講師に「コナギはどこにありますか。」と尋ねました。須田講師は水面を見渡し、水際にあったコナギを採取しました。「コナギはこれです。ハート型の葉が特徴です。」
あちらの方では、参加者が網を構えて生きものの捕獲に挑戦しています。見事にトノサマガエルとヨシノボリの捕獲に成功しました。
水田環境・湿地に出現する種が次々と確認されていきます。
観察シートの掲載種21種のうち、今回の観察会では17種が確認されました。徐々に水田環境・湿地で生育・生息する生きものが定着しているようです。
【まとめ】
再び五ケ山ダム管理所に戻り、会議室でまとめの講話がありました。
須田講師から、福岡県生物多様性戦略の概要についてお話がありました。
福岡県では、2050年に目指す姿として「生きものを支え、生きものに支えられる幸せを共感できる社会」という理念を掲げ、福岡県生物多様性戦略に基づき種々の施策を展開しています。
今年度から取り組んでいる第2期行動計画では、「生物多様性が魅力ある地域づくりに貢献する」という視点が導入されたところですが、今回のイベントのコンセプトは「手軽に自然環境を体感できる魅力ある地域づくり」で、まさにその視点に合致したものであり、参加者が自然環境の素晴らしさに気付くことができるものであったとの評価がありました。
また、「グリーンインフラ」という用語の説明もしていただきました。例えば、ビオトープはヒートアイランド現象を緩和したり、降雨に対する貯水機能等を有しています。このように人工構造物だけに頼らずに、自然が持つ多様な機能を活用することで、より豊かで魅力ある社会の実現を目指していこう、というものです。
最後に、事務局である筑紫保健福祉環境事務所からは、生物多様性を保全していくために、一人ひとりにできることについて話をさせていただきました。
自然環境を構成している様々な環境要素(大気・水・土壌など)のうち、どれか1つが崩れても生物多様性は守られなくなります。その要因の1つとして、地球温暖化が挙げられます。
2015年に締結されたパリ協定で気温上昇を2℃未満にすることが国際的に合意されました。2℃を超えると、地球温暖化により起こりうる様々な被害のリスクがぐっと高まることになります。これまでどおりのペースで二酸化炭素が排出されると、あと30年もしないうちに2℃に到達すると予測されています。
そこで、国民全体で省エネ・節電に取り組むため、国はCOOL CHOICE(賢い選択)を推進しています。温暖化が進行している中でどういうライフスタイルを選ぶべきか。温暖化をこれ以上進行させないために何をすべきか。一人ひとりにできることがきっとあります。
福岡県では、家庭における省エネ・節電の取組みを応援するために、エコファミリー登録制度を設けています。この日、新たに5世帯の方に新規登録の申請をいただき、エコファミリー応援キャラクター「エコトン」がプリントされたハンドタオル等の登録特典をお渡ししました。
「生物多様性を守るために、一人ひとりにできることがきっとある。」
このメッセージを、参加者の皆様にきっと受け止めていただけたと思います。
参加者の皆様の声
【お子さまより】
- 生きものをつかまえて、よかった。
【大人の方より】 満足度 平均4.0点(5点満点)
- 五ケ山ダムができるまでの状況や設備等の説明がわかりやすかった。また、倉谷ビオトープの自然環境のことがわかり、今後、自然と人間との整合性が必要であると思いました。
- 知らないことばかりで本当によかった。先生方のお話が聞けてよかった。
- 改めて自然の植物・生物を知ることができ、勉強になりました。
- 五ケ山ダムの素晴らしさと自然の大切さを再認識できました。
- もう少し時間が欲しかったです。
- 自然に触れて、大変貴重な時間を過ごすことができました。