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福岡県労働委員会委員コラム

更新日:2025年9月1日更新 印刷

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福岡県労働委員会委員のコラムを連載しています。

 
  投稿日 タイトル 投稿委員

第25回New!

令和7年9月1日 命令と和解 第44期会長 上田 竹志

第24回

令和7年8月1日 労働組合法の労働者って誰のこと? 使用者委員 熊手 艶子

第23回

令和7年7月1日 働く人の声を届けるために 労働者委員 古賀 栄一

第22回

令和7年6月4日 福岡県労働委員会がPR動画を作りました 公益委員 渡部 有紀

第21回

令和7年5月1日 労働委員会とは?:健在な労使関係を築く「羅針盤」 使用者委員 高松 雄太

第20回

令和7年4月1日 組合と力を合わせて風通しの良い職場を作りましょう 労働者委員 溝田 由美子

第19回

令和7年3月1日

ロウキ(労働基準監督署)より、サイバンショ(裁判所)に近い?

ロウイ(労働委員会)の役割って何?

公益委員 千綿 俊一郎

第18回

令和7年2月1日 労働委員会を知っていただきたい 使用者委員 丸山 武子

第17回

令和7年1月1日 新年を迎えるにあたり 労働者委員 西 央人

第16回

令和6年12月1日 対話の時代のお手伝い 公益委員 丸谷 浩介

第15回

令和6年11月1日 労使関係の構築について 使用者委員 小川 浩二

第14回

令和6年10月1日 快適な職場環境づくりは労使双方にとってメリット 労働者委員 藤田 桂三

第13回

令和6年9月1日 労働委員会ってどんなところ? 公益委員 服部 博之

第12回

令和6年8月1日 使用者と労働委員会 使用者委員 内場 千晶

第11回

令和6年7月1日 労使紛争と労働組合の役割 労働者委員 桑原 忠志

第10回

令和6年6月1日 労使関係におけるエチケット 公益委員 所 浩代

第9回

令和6年5月1日 和解による早期解決 使用者委員 吉村 達也

第8回

令和6年4月1日 労働者の権利と労働委員会 労働者委員 金光 千春
第7回 令和6年3月1日

使用者と労働者の利害

公益委員 大坪 稔
第6回 令和6年2月7日 括弧に入れること・括弧を外すこと

使用者委員

中村 年孝

第5回

令和6年1月5日 労使間トラブルの円満な解決を目指して 労働者委員 高田 章男
第4回 令和5年12月27日 継続的で前向きな労使関係の構築に向けて 第44期会長

上田 竹志

第3回

令和5年11月27日 中小企業経営者と労働問題 使用者委員 熊手 艶子
第2回 令和5年10月27日

労働組合法は働く人たちの味方

労働者委員 溝田 由美子

第1回

令和5年3月1日 御挨拶 第43期会長 德永 響

 

第25回

 

「命令と和解」

 

会長  上田 竹志 

 

 労働委員会が行う審査手続には、手続終了の方法として、主に「命令」(労働組合法27条の12)と「和解」(同法27条の14)の2種類があります。

 命令では、両当事者が主張した事実を、証拠に基づいて認定し、認定した事実に基づいて、申立人である労働組合が主張する不当労働行為(労組法7条)が認められるか、認められるとしたらどのような救済を命じるかを、労働委員会が判断します。裁判における判決と同じようなものです。

 和解は、労働委員会の関与や勧めに応じて、両当事者が一定の紛争解決内容について合意をすることです。その基礎には、民法上の和解契約(民法695条)があります。裁判でも、訴訟上の和解という、やはり同じような制度があります。

 さて、問題は、労働紛争の解決にとって、命令と和解のどちらが望ましいか、労働委員会は、どちらに比重を置いて手続を進めるべきか、ということです。

 一般的に見れば、和解の方が、紛争解決にとっては望ましいように思えます。命令では、「申立人の主張する、過去に生じたとされる行為が、不当労働行為と評価されるかされないか」という、過去志向の判断を行います。当事者間の、これからの労使関係をどのように構築してゆくべきかという、一番大事な未来志向の問題を、直接に扱うことはできません。これに対して、和解は、申立ての内容に縛られることなく、自由に和解内容を提案することができます。今後の団体交渉のルールや、組合員のこれからの処遇の詳細なども、和解条項に含めることができます。また、和解は両当事者の合意を本質的な要素に含むので、これからの労使関係を健全に構築するという意味でも、一定の合意点を見出すことは望ましいでしょう。

 では、「和解が命令よりも優先される」という結論で話が終わるかというと、必ずしもそうではありません。私は普段、大学で民事訴訟法という裁判のルールを研究していますが、裁判の世界では、「和解が判決よりも優先される」とはあまり言わないのです。なぜでしょうか。

 まず、和解はいつでもできます。当事者は、手続の段階に関わらず、自主交渉を進めて合意に達すれば、和解ないし手続の取下げによって、紛争を解決できます。第三者である労働委員会は、その支援を行いますが、和解の本質は当事者の意思にあるので、和解を強制することはできません。和解の主役は労働委員会ではなく、当事者です。

 また、労働委員会の目から見て、望ましい和解内容があったとしましょう。それは、中立な第三者の目から判断している点で、より冷静で穏当な内容かもしれませんが、それが本当に当事者にとって良い内容かは、客観的に決められるものではありません。社会的な営みとは、正解がないところで、過去と未来を結びつける決断をその都度行うものです。和解の主役は、やはり労働委員会ではなく、当事者なのです。

 こう考えると、労働委員会が当事者に和解を勧める際には、一定の限界があるように思えます。申立人である労働組合は、命令を求めて審査手続の申立てを行います(和解だけが目的であれば、あっせん申立てを行うでしょう)。しかし、「当事者が命令を求めているのに、労働委員会が和解を勧めてきて、いつまでたっても命令をもらえない」という事態は、あまり望ましくないようにも思えます。

 以上の問題は、人によってかなり意見が異なるのですが(全国的には、和解を重視する傾向にあるようです)、福岡県労働委員会は、集中的な和解の勧めと並行して、審理スケジュールを定めて迅速な命令の発出を目指すことで、命令と和解のバランスを取っていると理解しています。もちろん、福岡県労働委員会の元で和解が成立すれば、一番望ましいので、公益委員、労働者委員及び使用者委員は、その支援に尽力します。しかし、上記のバランシングにより、福岡県労働委員会は、全国の中でも特に手続の迅速化に成功した例となっています。

 

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